総論
情報編集の入口に立つ
用法1「わける/あつめる」では、これから学ぶ情報編集、および情報というものをどうとらえるかという見方をつかみながら、おもに情報をインプットする場面の編集を学びます。
いまや、宇宙衛星から届く気象データも個人の健康状態も、ありとあらゆるものが「情報化」されています。また新聞やテレビやSNSなどのメディアも必ず「編集化」されています。その渦の中で、気づけば、誰もがキーワード検索で似たり寄ったりの「編集」を繰り返しています。
情報が私たちにとって「必要な情報」=「知」になること、これこそが「編集」なのです。イシス編集学校ではそのために、情報をどのように動かすといいか、そのプロセスに関わる方法を学びます。
まずは「情報」というものの基本的な性質を知る必要があります。情報に対する見方を自由にし、いきいきと動かせるようにします。あらためては、学んでこなかったことです。
情報の見方を自由にすることは、情報を分けたり集めたりすることです。情報を使ったり動かしたりするために、情報に手足をつけるようなものということもできるでしょう。
情報社会を柔らかく、いきいきと引き寄せて見られるようにする。これが情報編集の入口です。
すべてを情報と見る
1つの編集モデルを提示しておきましょう。編集工学では、情報収集の前後一連の編集プロセスを「レパートリー・カウンター・パレット」という3段階の編集モデルで表しています。これは私たちがデパートや店に行って買物をするときの情報の流れをモデル化したものです。
●情報レパートリー:情報がたくさんならんでいるところ。スポーツ用品、化粧品など、情報群がたまっています。何かを思い出すときは、記憶のレパートリーから情報を取り出すわけです。
●情報カウンター:多くの中から特定の情報収集へコントロールが始まる場所です。お店の棚を眺め、手にとった商品(情報)を「仮に」置いている状態です。好みなどの「フィルター」を通して情報の取捨選択してもってきます。このフィルターを自在に持ち出せることが、情報収集の要になります。
●情報パレット:選んだ情報が配置された状態。「トレー」(お盆)とも言います。食材なら、レシピやコストや家族の体調などの与件が軸となって、複数の情報が分類され、組合わさって、料理という編集の佳境が、いよいよここから始まるわけです。
このように、商品も食材も世の中の「すべてを情報と見る」こと、そして「編集可能と見る」ことから、編集工学はスタートを切っています。編集術は、そのように編集を可能にする方法です。用法1の中で、順に編集稽古していきます。